昭和は遠くなりにけり

港街から日々のよしなしごとを淡々と

認知症の人が見ている世界

母がかなり物忘れが激しくなり、お金の管理などが自分では難しくなってきているので買ってみた本。

「マンガでわかる」というのは最近というより、もう今世紀の定番で、確かに分かりやすくはなるものの中身が薄く、テキトーに作った本が多いと思っていたが、これはその思い込みを完全に裏切る一冊。
実際の事例が豊富に載っていて、マンガでであるが故に強いリアリティを持って迫ってくるし、認知症患者の心理状態や考えていることが実によく分かる。最近は涙腺が緩いので、マンガの中で著者の川畑先生が患者に寄り添いながら問題を解決するたびに、ちょっとウルっとしてしまう。
単に、文章を読むのが面倒でしょうからマンガにしましたよー、というものとは違って、マンガでないと伝わらない部分をマンガで表現したというのが明らか。
マンガの後に配されたコラムや解説のテキストも、非常に理解しやすくまとめられていて、とても丁寧に作られている。

母くらいの軽い症状には、直接当てはまる事例は多くはないが、家族としての心構えや接し方は大いに参考になった。「寄り添いとは、時間・場所・感情を共有すること」というのは、相手が認知症でなくても、とても大切なことだと思う。

文響社というのはあまり聞かない出版社だけれど良い本を作るねぇと家人に話しかけたところ、一世を風靡した「うんこドリル」を出した会社とのこと。
どうやら、天才的な編集者がいるらしい。