昭和は遠くなりにけり

港街から日々のよしなしごとを淡々と

ディアベッリ変奏曲

 まだ聴いていないベートーヴェンということでCDを購入。新品が1,000円を切るのだから、本当に良い時代だ。いつまでCDというメディアがあるのか分からないが。
あまりに売れないので、もう音楽業界がヤケになって、CDを投げ売りしているのかも知れない。

グールドが演奏したバッハの「ゴールドベルク変奏曲」的なものを想像して聴いてみたが、元の主題がワルツだからか、もっと華やかでカラフルな印象。技術的なことはよく分からないまま聴いているが、ピアノの練習曲といった風情で始まり、段々と複雑な曲調になっていく様が面白い。第29変奏からはほぼ別の曲で、そこだけ聴いていても楽しい。

そもそも、作曲家で楽譜出版業者だったディアベッリが、自分の考えた主題による変奏曲を当時の有名な作曲家たちに公募したのがきっかけ、という成立の裏話が興味深い。
ベートーヴェンはそれには応じず、自分一人で32曲の変奏曲を作ってしまったというエピソードが有名だが、ディアベッリの元の企画の方も成立している。

曲を応募した作曲家の一覧がWikipediaで確認できるのだが、全51人の中で、自分が知っているのは「名前は聞いたことがある」レベルでも10人に満たない。作品を知っているのは、ツェルニー、リスト、シューベルトくらいか。
wikiの日本語記事があるのが15人、英語やドイツ語なら記事があるのが25人。残りの11人はWikipedia上に何の情報もない。

約200年前のことだから当たり前かも知れないが、後世に名前や作品が残るというのは大変なことだし、多分にラッキーな面もあると思う。この埋もれた数十人の作曲家たちの作品の中にも、きっと今聞いても楽しめる曲がいくつもあるはずだが、恐らく日の目を見ることはないだろう。

そう考えると、クラシックと言えども、結局はその時代時代で消費されていくソフトであって、その意味では現代のポップミュージックと変わるところはない。

1993年に出たジミ・ヘンドリックスのオムニバスのトリビュート盤というのがあって(リッピングした後売ってしまったが)、クラプトン、ジェフ・ベックリヴィング・カラー、キュアー、パット・メセニーなど、なかなか豪華なメンツなのだが、2200年に一体何人(何組)のミュージシャンが歴史に記録されていて、実際に聴かれているだろうか。
あれほど衝撃的だったリヴィング・カラー登場の記憶も(歳のせいか)既に薄れつつある今、ジミヘン本人以外は、ちょっと難しい気がする。

 

肝心のディアベッリ変奏曲を語る知識も能力もないので、CDのおまけについて。
特典・メガジャケとあったので、どんなものかと思ったら、

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まさにメガジャケ。とは言え、LPのジャケットよりは小さいという中途半端サイズ。
壁に貼って毎日アシュケナージを拝む気もないので、部屋の隅で埃を被っている。