昭和は遠くなりにけり

港街から日々のよしなしごとを淡々と

ヴォイチェフ・キラール

キラール「合唱曲と管弦楽曲集〜祈り/出エジプト/クシェサニ」 指揮:ヴィト

なぜこのCDを買ったんだったか。片山杜秀の本にキラールのことが書いてあったからだと思うが。
片山センセの音楽評論を読んでいると、曲が聴きたくなって関連するCDを買ってしまうのだが、往々にして音源より文章の方が面白い。別に構わないが。

さて、このCD。作曲者はキラールである。名前がカッコいい。アニメやゲームのキャラクターに使われてそう。

1曲目の「クシェサニ」というのが代表作らしいが、この曲の終わり方はビートルズの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」を思い出さざるを得ない。曲の最後にいろんな楽器が一斉に出鱈目にがなりたて、どんどん盛り上がって頂点に達したところでスパッと終わる。
(がなりと言えば、髙橋がなりという人がいたな。いま何をやってるんだろうか)

1974年の曲らしいから、キラールがビートルズに影響を受けたのかも知れないが、きっとジョンやポールも何か元ネタがあったんだろう。

後の3曲は合唱曲。声楽はあまり好まないが、どれも現代音楽のくせに聞きやすくて良い。

特に3曲目の「出エジプト記(Exodus)」が面白い。こっちはラヴェルの「ボレロ」の引用。というかパクリ。作曲した時点で著作権が切れていたのかが気になる。
あ、これボレロだなーと思って聴いていると、曲の最後の方で合唱が入ってくるが、これはアバド指揮・ロンドン交響楽団のCDで、楽団員が感極まって曲のクライマックスで自然に叫び声を上げる、というのを思い出す。 

ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、パヴァーヌ

ラヴェル:ボレロ、スペイン狂詩曲、パヴァーヌ

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演奏しながら興奮して声が出てしまうなんてこともあるのか、と長年素直にCDの解説文を信じていたが、そういう演出だったと後に聞いて、よく考えればそりゃそうかと。

作曲は1981年で、アバドの録音は1985年らしいから、こっちは逆にアバドがこの「出エジプト記」にインスパイアされた、という可能性もあるかも。ないか。

しかしどうかな、ヴォイチェフ・キラール。
映画音楽で有名らしく、現代音楽のくせに聴いていて素直に楽しいし、面白い作曲家だとは思うが、CDを探して他の曲も聞いてみたい!となるかと言われれば、まあそこまでではないかも。